ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路(Nannerl, la sœur de Mozart)
モーツァルトの姉の伝記映画。
ヴェルサイユ宮殿でロケ。
手持ちカメラの画面のぶれがホームビデオのようで、
現在とはまるで違う世界だが息づかいを感じるほどリアル。
馬車移動の不便さや、ロウソクの明かりしかない当時の夜の暗さ、
豪華な装飾のドレスの布の重さも伝わってくるかのよう。
女性であることによって人生が制限される時代において、
音楽の才能を持ちながら天才の弟の影に追いやられる姉ナンネル。
作曲家としての限界を突きつけられ、また女性としての恋に破れた後、
母親に料理を手伝うように言われて、
料理なんかできないと憤る印象的なシーンがある。
しかしナンネルは気丈な人ゆえに気を取り直して母に謝り、
結局は家族の団らんの食卓を手伝うのである。
映画はここで終わるが、
実際のナンネルはその後も家族とともに弟の演奏を助け、
恋をしても父の反対を押し切れず、
父のすすめる人物と結婚する。
家族への愛とそれを受け入れる強さを持っているがために、
自分を枠にはめて生きることができてしまったかわいそうな人かもしれない。